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天寿酒造(株)

天寿

酒造探訪 天寿酒造編

矢島地区の天寿酒造へ

由利本荘市矢島地区は、雄大で秀麗な鳥海山の麓にあり、江戸時代・矢島藩の城下町の風情が残るこじんまりとした町です。

冬の晴れ間が広がる1月末に、この由利本荘市矢島地区で明治7(1874)年から酒造りをしている天寿酒造の酒蔵見学に訪れました。

天寿酒造の軒先には、造り酒屋の象徴ともいえる杉玉が吊るされています。
この杉玉、酒林(さかばやし)ともいうそうです。

軒先に、この緑の酒林を吊すことで新酒が出来たことを知らせる役割を果たしているそうで、青々とした酒林の杉の葉が徐々に茶色がかってくるという色の変化が新酒の熟成の具合を物語るとのことです。

天寿酒造の前
ショールームと創業時の蔵の棟書き

きれいなショールーム

酒林が下がっている入口の右手に事務所への入口があります。
そこは、平成24(2012)年に改築したばかりの常設試飲場を併設した天寿酒造の酒が並ぶショールームともいえる空間です。

天井には、創業期に建てた二号三号蔵の棟書き部分を板に挽いたものが展示されています。
これは蔵を取り壊した際に、その太い棟を六代目が製材所に持ち込み、棟書き部分のみを板に挽いて残してあったものだそうです。

事務所に酒蔵見学に来た旨を伝えると天寿酒造の大井建史社長自らが案内してくださるとのことでした。

ショールームの展示品
瓶詰め工場

酒蔵見学スタート

表の事務所側から行くためか、まず通るのが瓶詰め工場です。
瓶詰めは機械化されていますが、ラベル貼りの一部などは、手作業で1本1本丁寧におこなわれ、仕上げられていました。

倉庫スペースでは、ケースに入ったお酒をフォークリフトなどで運ぶ際の土台になる杉製のパレットがレトロな雰囲気を醸し出しています。

さらに、見学していると従業員の方が素敵な笑顔で次々と挨拶をしてくださり、なんとなく心がほんわかと温かくなりました。

倉庫の杉製パレット

ついに酒造りの現場へ!

そして、ついに酒造りの現場へ!
麹室の前には出来上がった麹が寝かされています。
麹室のすぐ脇には、酒を造る元となる清酒酵母を作る酒母室。
こちらで使っている酵母の3分の1は花から分離した農大花酵母だそうです。酵母が酒の味と香りを決めるとのことだったので、「花の香りがするの!?」と思いましたが、花の香りはしないそうです。

酒母室
麹作りと清酒酵母
洗米・浸漬・計量器・蒸し器・醪

天寿酒造で使っている水は、井戸から湧き出す鳥海山の伏流水だそうです。

多くの酒蔵では、一部の米が含む水分量を計って指標としているそうですが、天寿酒造では、すべての米で水分量を計るので、浸漬の水分量の誤差が0.01%以下だそうです。

水を含ませた米の重さは、左の写真で私がぶら下がっている計量器で量り、蒸された後に麹作りの段階へと進みます。

次は、醪(もろみ)を発酵させている部屋です。
今回の見学で一番心に残ったのは、やっぱりここです。

タンクの中を覗くと、ホントにひっきりなしに発酵していて、耳を澄ますとポコポコやフツフツといった音が盛んに聞こえてきて、こんなにもにぎやかだったとは驚きでしたし、まるでお酒の赤ちゃんがぷくぷくと息をしているかのようで、とてもかわいかったです。

次の上槽(じょうそう)で、醪からお酒を搾るのだそうですが、いくつかのタンクの薫りをかがせていただくと、当たり前のことかもしれませんが、お酒の種類によって香りが違います。

この醪を醪自動圧搾機(もろみじどうあっさくき)で搾ることでお酒にして、そのときに出る固形分がいわゆる酒粕になるそうです。

発酵タンクとその下部・上槽

杜氏さん登場

大井社長のご案内で、いよいよお酒になる段階まで見てきました。
これからお酒を見に行くという時に、天寿酒造の杜氏さんとばったり!

天寿酒造・139回目(平成24年)の造りから担当する杜氏の一関陽介さん。
杜氏というと頑固な職人肌の年配の方というイメージでしたが、一関さんは、気軽に記念撮影にも応じてくれるやさしそうな30歳。
もちろんこの年齢で杜氏を任されるのだから、酒造りには厳しいのでしょう。

天寿酒造の杜氏・一関陽介さんと大井社長

搾りたての生酒を試飲

仕事に戻った杜氏さんと別れて進んでいくと、資料コーナーとなりました。
昔の酒造りの様子を描いた絵や道具、それに天寿酒造の歴史や歴代杜氏などがパネルで紹介されています。

大井社長のお話を伺いながら、進んだ先には搾られたばかりの生酒が!
タンクから大井社長がひしゃくに取った生酒を勧めてくださいました。

口に含むとフレッシュでフルーティな、爽やかな香りが広がります。
一杯、もう一杯と続けていただきたくなる味です。

さらに進むと酒粕を取り込んでいました。
醪自動圧搾機を通ってきたため、板状になっています。
おみやげとして、その場で何枚か袋に詰めていただきました。

オーブントースターでちょっと炙って食べるとおいしいそうです。
帰ったらやってみよう!

搾りたての原酒を試飲する様子
天寿の米と精米の様子

米から作る天寿の酒

天寿酒造では、地酒としてその土地でできる最高の品質を目指して、原料米である「秋田酒こまち」と「美山錦」をすべて「天寿酒米研究会」で栽培しているそうです。

この研究会は「自社の使用する酒米は地元で確実に確保する」という目的のもとに昭和58(1983)年に設立したことが始まりで、蔵人を中心に地元の一般農家で構成されているそうです。

最近では、酒蔵が米の栽培に携わることが珍しくはなくなってきているそうですが、天寿酒造が酒米作りに携わり始めた頃は、酒蔵が米作りから関わっていることは、ほとんどなかったそうです。

まろやかな味わい~天寿の酒

一通り見学して常設試飲場のあるショールームに戻ってきました。

今日、試飲させていただくのは、原料米の美山錦の栽培から蔵人の手によって育まれた「大吟醸 天寿」と国際的な賞を数々受賞している「純米大吟醸 鳥海山」、それにうすにごりの生酒「純米吟醸 雪ごよみ」の3種類です。

ぐい呑みサイズの利き猪口で味わいます。
普段3種類を1度に飲むことはなかなかないので、お酒の香りや味わいの違いを楽しむことができました。

今回の酒蔵探訪では、大井社長の天寿の酒にかける熱い情熱や愛情に感動しました。
お酒の奥深さや魅力を感じたことによって、お酒を飲む楽しさが一層増したように思います。これからは、料理との組み合わせも意識してお酒を楽しんでみたいと思います。

ぜひ、あなたも由利本荘の地酒を巡る旅にお出でください。

【酒蔵見学のお申し込み・問い合わせ】

天寿酒造株式会社

電話:0184-55-3165(代表)

〒015-0411 秋田県由利本荘市矢島町城内字八森下117番地

酒蔵見学は要予約(7日前までに電話)
所要時間は約1時間
詳しくはこちらをご覧ください→【天寿酒造】イベント・蔵見学
※ただし、イベントやその準備等で対応できない場合があります。

試飲の様子

※掲載されている写真はすべてイメージです。

※印象や味に関する表現は、個人によって感じ方が異なる場合があります。

※掲載されている情報は、取材時のものであって、予告なく変更されている場合があります。

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